儚い羊たちの祝宴

「儚い羊たちの祝宴」を読みました。

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1.感想(ネタバレなし)

米澤穂信の小説です。

読書サークル「バベルの会」に関係する人物たちに起こる5つの事件の物語です。

1.身内に不幸がありまして

村里夕日の手記という形になっています。

彼女は幼い頃から丹山家に仕え、丹山吹子の身の回りのお世話をしています。

吹子が楽しみにしていた「バベルの会」の読書会の2日前、不良の兄の宗太がライフルを持って丹山家を襲うのです・・・。

2.北の館の罪人

六綱家の前主人、虎一郎の妾の子である内名あまりの物語です。

彼女は母親を亡くし、六綱家を頼ります。

そして、六綱家の別館に住む事になります。

この別館は、窓に鉄格子が入っており、出入口も鉄の扉で鍵がかけられております。

まるで牢獄です。

ここには、すでに住んでいる人物がいました。

六綱家長男の早太郎です。

こうして、早太郎の身の回りの世話をすることになったあまりは、奇妙な生活を始めるのです・・・。

3.山荘秘聞

飛鶏館を管理する屋島守子の物語です。

飛鶏館は、貿易商の辰野嘉門の別荘です。

屋島は、新たに雇われ、そこを1人で管理する事になります。

しかし、あることに気付きます。

1年たつのに、ひとりもお客が来ないのです。

そんな冬のある日、屋島は雪山登山で滑落した男を発見するのです・・・。

4.玉野五十鈴の誉れ

小栗純香と彼女の使用人の玉野五十鈴の物語です。

小栗家は、祖母が王として振る舞う家です。

15才になった純香は、「人を使う事を覚えた方がいい」と五十鈴を付けられます。

同い年という事もあり、純香は彼女に心を許していくのですが・・・。

5.儚い羊たちの晩餐

荒れ果てたサンルームに、女学生が入ってきます。

部屋の円卓には1冊の本が置かれています。

その本は日記で、最初のページには「バベルの会はこうして消滅した」と走り書きがされていました・・・。

とにかく、読書サークルの人達の物語なので、様々な本が例えとして登場します。

だから、読書家の方であるほど楽しめると思います。

ちなみにわたしは、出てきたどの本も読んでいませんでした。

しかし、この小説はおもしろかったです。

2.感想(ネタバレ)

江戸川乱歩の小説を読んでいるようでした。

米澤さんの知識がすごいです。

どれだけ本を読んでいるんだ???

出てくる書物の多さにびっくりです。

読書家の方は、わたしの何倍も楽しめたのだと思います。

1.身内に不幸がありまして

吹子の「自分を律しないといけない」という強い思いが殺人にまでいくとは・・・。

結局、夢遊病である自分の姿を見られないために、読書会を休む口実を作っていたのですね。

夕日は、感性が豊かだったのでしょう。

知らず知らずのうちに読書で精神を追い込み、夢遊病と思いこむとは。

江戸川乱歩の作品に似た狂気を感じました。

とてもよくできた短編でした。

2.北の館の罪人

早太郎は、あまりに砒素を盛られている事がわかっていたのですね。

しかし、それを『赤い手』で表すとは・・・。

芸術家ですね。

そして詠子はそのメッセージに気付いたのでしょうか?

この後がどうなったのか気になります。

3.山荘秘聞

これはおもしろい。

屋島守子の気持ちがわかります。

だから怖いのですが・・・。

確かにコレクターはコレクションを自慢したいですよね。

屋島は、それが自分の磨きあげた飛鶏館であり、自身のもてなしの技術だったわけです。

1年間誰も来なかったところに、急にお客が来て、味わった満足感たるや・・・。

それは麻薬でしょう。

しかし、屋島の以前仕えていた前降家での『特別な渉外』って何をしてたのでしょう。

口封じもしていたって・・・怖い。

4.玉野五十鈴の誉れ

怖い話でした。

何と言っても祖母でしょう。

家柄にとり憑かれた人間です。

ひさびさに「死んで良かった」と思うキャラクターでした。

多分、昔は多くいたのでしょうね、こんな人。

田舎の旧家には、未だにいるのかも。

たしか、昔読んだ本にあったと思うのですが、座敷わらしの謂れも似たような話だったと思います。

座敷牢に入れられた子供だったと。

太白を殺したのは五十鈴だったのかどうかはわかりません。

しかし、言いつけを必ず守る五十鈴は、純香と一番初めに交わした約束を守っていたのですね。

「五十鈴さんは・・・。ここで何をしてくれるの」

「お嬢さまがお望みになることを」

これを何年経っても守り続けた事が誉れだったというのはいいですね。

しかし、「始めちょろちょろ、中ぱっぱ。赤子泣いても蓋取るな」という言葉が、こんなに怖く聞こえたのは初めてです。

5.儚い羊たちの晩餐

タイトルにもなっている作品です。

今は無きバベルの会がどうやって消滅したのか・・・という話でした。

大寺鞠絵の恨みと勘違いで無くなったのですね。

蓼沼では、『メデューズ号の筏』のような光景が展開されたのでしょうか。

そして、ひっかかる単語『アミルスタン羊』。

千街晶之さんの解説を読むと、スタンリイ・エリンの短編「特別料理」に出てくるとの事です。

わたしは未読ですが、この儚い羊たちの晩餐を読んだら、どう考えてもハンニバルの世界です。

夏さんやりすぎ・・・。

この小説は、どの作品も途中から感じが変わるのが面白かったです。

事件があって、途中から解決編というような。

そして、その解決編が狂気に満ちており、誰もが心にしまっている不安と感情をくすぐるのです。

怖いよ~。

米澤穂信、恐るべし・・・。

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