「柘榴坂の仇討」を観ました。
みなさんは“矜持”を持っていますか?
わたしは、もちろんありますよ。
ざっと思い付くだけでも・・・
えっと・・・
うぅ・・・
む~ん・・・
ま、またの機会でいいでしょう。
今回は、武士の矜持をずっと持ち続けた男たちの“柘榴坂の仇討”です。
安政7年3月3日。
雪が降るなか、桜田門外へ井伊直弼の一行は向かいます。
志村金吾は近習として、井伊直弼の駕籠の側に付いています。
そこに男がひとり走ってきました。
手には、駕籠訴を持っています。
近寄る志村。
その瞬間、男は切りかかってきました。
素早く飛び退き、アイーンのポーズの志村。
周りから刺客が次々と飛びかかってきます。
志村は刀を抜こうとしますが、
「汚れた刀はカッコ悪いよ。ナウなヤングなら見た目も気にしないと」
の理由で柄袋をしていたため、刀を抜けません。
アイーンのポーズから水平チョップを打ちながら、敵に立ち向かいます。
しかし、刀の抜けない状態で、切りかかってくる相手には対抗できません。
傷付き倒れる仲間たち。
逃げていく、高木、仲本、加藤、いかりや・・・。
混乱の中、志村は逃げる男を追いかけます。
「待たんか~!!」
志村はアイーンのポーズで飛びかかっていきます。
「スーパー・ダイナミック・アイーン・チョップ!!」
その時、稲妻が走り、天地が揺れ、男がよろけます。
そして、青白く光る志村の右手がほとばしります。
スカッ!!
間一髪、相手がよけました。
男の左胸から、血が流れます。
次の瞬間、銃声が鳴り響きます。
そして、
「井伊直弼を討ち取ったぞ!!」
という声が聞こえてくるのです。
いい映画だった!!
目から心の汗が出ました。
移り変わる時代の中で取り残された、武士の矜持にこだわった二人の男の物語でした。
もう、ここまで来たら呪縛のようにも感じます。
志村金吾は、藩主である井伊直弼の人柄に惚れ込みます。
幕末の志士の人気が高いので、どうしても悪役になってしまう井伊直弼。
しかし、この映画の彼は、めちゃめちゃ風流でいい人です。
その彼を守れなかった金吾は、切腹も許されず、逃亡した浪士5名を討ち取れと命じられます。
生き恥をさらしながら、5名の行方を追う金吾。
その間、時代は移り変わります。
開国した日本は、海外の文化が入り、誰もが洋服を着て、髪形も現代と同じです。
その中で、髷を結い、袴姿で腰に日本刀を携えた金吾が歩いているのです。
彼にとって、桜田騒動から時代が動いていないのですね。
そして、13年が経ちます。
浪士の唯一の生き残り、佐橋十兵衛を秋元和衛警部の力を借り、見付けます。
佐橋は、金吾が桜田騒動で切りあった相手でした。
そして、金吾は、話をするうちに、佐橋も桜田騒動から時が止まっている事を知るのです。
そして、佐橋の自害を止めた金吾。
金吾は、雪の中の椿を見て、秋元警部との話を思い出し、そして、井伊直弼の「かりそめにも命をかけたる者の訴えを、おろそかに扱うな」との言葉で、佐橋に生きるよう伝えます。
佐橋を許すことで、自分も許すことができたのです。
佐橋十兵衛も、武士の矜持を持つがゆえに苦しんだ男でした。
彼は、攘夷を実現するために、井伊直弼を討ちました。
しかし、蓋を開けてみれば、日本は開国をして、西洋文化が入ってきます。
果たして井伊直弼を討った事は正しかったのか?と悩む事になりました。
しかし、切腹をするわけにもいきません。
切腹は武士にとって名誉ある死です。
今の自分にはふさわしくありません。
だから、自分にふさわしい死である、仇討ちを待っていました。
そこに金吾がやって来ます。
しかし、金吾は生きるよう話をします。
金吾から井伊直弼の話を聞き、許しを得たことで、自分自身を許せるようになったのでしょうね。
こうして、生きる決意をした佐橋は、自分に好意を持ってくれているマサとチヨを受け入れるのです。
あと、金吾の妻セツですね。
13年、夫を支え続けた彼女の最後の表情はたまりませんでした。
広末涼子はいい女優になったなあ。