淵に立つ

「淵に立つ」を観ました。

淵に立つ – Yahoo!映画

1.はじめに

みなさんは、昔の知り合いが突然訪ねてきたら、どうしますか?

家に上げて食事会?

近くのお店で飲みながら語り合う?

さぞ盛り上がり、話はつきないでしょう。

わたしですか?

わたしはわかりません。

訪ねてくる知り合いなんていないし。

あ、目から水が・・・。

今回は、昔の知り合いが訪ねてきた事で、人生を狂わされる夫婦の物語“淵に立つ”です。

2.あらすじ(妄想スパイス入り)

鈴岡家は郊外で小さな金属加工工場を営んでいた。

家族は夫の利雄と妻の章江、10歳の娘・蛍。

3人が穏やかに暮らしていたある日、謎の男が突然家に入って来た。

男は無造作にタンスの引き出しを開けていく。

さらに、近くの壺を持ち上げると、力一杯叩き割る。

そして、散らばったコインをかき集めて懐に入れ、去っていった。

利雄は蛍に言い聞かせる。

「勇者様はいつもそうなんだ。勝手に入ってきては、タンスや壺の中にしまってあるアイテムを持ち去ってしまうんだ・・・」

RPGゲームの世界にたたずむ鈴岡家。

この災難はまだ続くようだった。

3.感想

終わった瞬間、力が抜けた・・・。

鑑賞中にずっと緊張感が張り詰めていました。

なんて怖い。

そして悲しい物語なんだ。

工場を営む鈴岡利雄の元に八坂草太郎が現れます。

八坂を迎え入れ、自宅に住まわせる利雄。

とまどう妻の章江と娘の蛍。

そして、日常が壊れていきます。

この八坂。

殺人の罪で服役をして出所した男です。

しかし、実直な雰囲気で教養もあり、魅力的なのです。

利雄と冷めきっていた章江は、次第に八坂に惹かれていきます。

そして起こった蛍の事件。

ここは何があったのか、描かれていません。

立ち尽くす八坂と、頭から血を流して倒れている蛍。

八坂がやったのか、それとも事故なのか・・・。

しかし、この事件直後に八坂は姿を消してしまうのです。

それから8年後。

利雄と章江は、障がいの残った蛍を介護しながら、生活をしているのです。

これは業の物語です。

利雄と章江は八坂に業を背負わされ、人生を狂わされてしまうのです。

まず、章江です。

章江は利雄との夫婦関係が冷めきっていました。

そこに現れた八坂。

だんだん惹かれていきます。

プロテスタントだった章江は、自分がこの男を救ってやらなければいけないと思っていたのかもしれません。

しかし、蛍の事件が起こり、八坂は失踪します。

8年後、章江は極度の潔癖症になっています。

これは、八坂に触れた手で蛍を触ってはいけないという気持ちの表れなのでしょう。

それは、蛍を誰にも触らせないという行為にまでなり、彼女が触れる物は全て洗浄するというところまでになっています。

蛍を守れなかった章江の気持ちが過剰になったのでしょうね。

そして、利雄との関係です。

事件から8年経って、なんと2人の関係は良くなっているのです。

以前はしゃべらない利雄と敬語を使っていた章江。

それが普通に会話しているのです。

皮肉にも蛍の障がいが2人の気持ちを近付けたのですね。

利雄は興信所を使い、八坂の行方を探していました。

しかし、章江はもう止めようと言っています。

彼女は八坂の幻影に悩まされていたのです。

もう関わりたくなかったのでしょう。

しかし、工場で働く山上孝司の素性がわかり、利雄が殺人の共犯者だと知ってしまいます。

さらに、利雄が本音を語ることにより、章江は図星を突かれてしまうのです。

「蛍は俺とお前への罰なんじゃないかって思うんだ時々。お前、八坂とデキてたろ。正直、俺は蛍があんなんなって、どっかでホッとしたんだ。何でだろうな。8年前、俺達はやっと夫婦になったんだ」

認めてしまいそうになってしまう章江。

しかし、それを認めてしまったら、蛍の生きる意味が損なわれてしまうのです。

自分の頬を叩く章江。

こんな事を認めるわけにはいかないのです。

そして、利雄に別れを切り出すのです。

そんな時に八坂かもしれないという男が見つかったという連絡が入ります。

八坂との縁を切りたかった章江。

しかし、蛍の障がいが罰ではない事を確認するため、孝司を連れて八坂に会いに行くのです。

しかし、見つかった男は八坂ではありませんでした。

帰り道、章江は夢の中で蛍と会います。

美しく育った健常者の蛍。

章江はそこで蛍に何かを言われます。

はたして何を言われたのか?

わたしは、蛍に「この8年間は罰なのでは?」と問われたのではないかと思います。

そして、絶望した章江は蛍を連れて、橋から飛び降りたのです。

この章江役の筒井真理子さんの演技が素晴らしかった。

8年後は体型も変わっていたし。

顔を覆った時の手は、洗いすぎで節々が赤くなっているんですよね。

もう細かいところまでバッチリでした。

次に利雄です。

利雄は八坂の殺人の幇助をしていました。

八坂は利雄の事を隠し通し、1人で罪を被ってくれたのです。

その恩もあり、章江の意見も聞かず、強引に家に住まわせるのです。

そして、あの渓流釣り。

八坂が本性を出す唯一の場面です。

あれは怖かった。

あんな本音をぶちまけられたら、利雄のように「すまん・・・」としか言えないよ。

ここで2人の力関係がわかります。

八坂の方が利雄よりも立場は上なのです。

この一件で、八坂のタガが外れたのか、章江にちょっかいを出し始めるのです。

そして、利雄もそれをわかっているようでした。

蛍の事件があり8年後。

びっくりする事が起こっていました。

工場や家が立派になっているのです。

利雄、がんばったんだ。

やはり蛍の障がいが良くも悪くも彼の生き方を変えたんだな。

しかし、利雄は蛍の障がいを罰だと考えていました。

章江と蛍の距離が近くなっていますが、利雄は蛍との距離が遠くなっている感じがするのです。

心のどこかで蛍の人生を諦めているのかもしれません。

そこに章江と蛍の橋からの飛び降りが起こります。

孝司と共に2人を助ける利雄。

しかし、章江、蛍、孝司は気を失っています。

そこで利雄が3人の蘇生措置を行うのですが、その順番がびっくり。

章江(妻)→孝司(加害者の息子)→蛍(娘)

だったのです。

普通だったら

蛍(娘)→章江(妻)→孝司(加害者の息子)

になると思うのですが。

もし蛍が健常者だったら、この順番になっていたのかもしれません。

それだけ利雄の中の蛍の位置が低いのです。

1度は蛍の心臓マッサージを諦める利雄。

しかし、また起き上がり、再び蛍の心臓マッサージを行います。

利雄は見てしまったのです。

川の中で動かない体を動かし、水面に上がろうとする蛍を。

彼女の生きようとする力を。

そんな蛍を利雄は放っておくことができるはずないのです。

しかし、この作品は怖かった。

こんなに人間の怖さを描いている作品はひさしぶりでした。

八坂草太郎って何だったのだろう?

蛍の事件の真実はどうだったのだろう?

そこがわからないからこそ、この理不尽さが恐怖になるのでしょうね。

(Visited 10 times, 1 visits today)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存