べしゃり暮らし

「べしゃり暮らし」を読みました。

べしゃり暮らし – 週刊ヤングジャンプ公式サイト

感想(ネタバレなし)

みなさんは『お笑い』という仕事をどう思いますか?

わたしはお笑い芸人になりたかったです。

幼い頃はドリフターズ全盛期で、その姿に憧れたものです。

一挙手一投足にわき起こる笑い。

幼いながらも「笑いを取ることの快感」を、テレビを通して感じていたのでしょう。

そして現れたダウンタウン。

彼らの登場によりお笑いのレベルが格段に上がりました。

わたしが強烈に覚えているクイズ番組。

化粧を落とした女性のすっぴんを見て誰かを当てる問題でした。

松本人志が早押しボタンを押して答えました。

「デーモン小暮!」

笑い転げました。

そして、浜田雅功は司会者にキレて、並んでいる回答席の上を駆け回っていたのです。

八艘飛びのように。

当時、決して高くなかった芸人という地位。

彼らは、芸人の地位を上げるため戦っていたのです。

しかし、お笑いのレベルと共に、ハードルもむちゃくちゃ上がりました。

「わたしには無理な世界だ」

こうして芸人の夢は捨てました。

そして、今のお笑いの世界。

まさに戦国時代。

そんな世界を描いたのが、この『べしゃり暮らし』です。

「あんなの誰でもできるよ。バカをやって金をもらえるんだから」

このような事を言い、今でもお笑い芸人を下に見ている人は多いです。

そんな人ほど読んでほしいです。

「笑いを取る事」を仕事にするのはどれだけ大変か。

これは、上妻圭右と辻本潤がコンビを組み、芸人となってお笑いの世界を生きていく物語です。

この世界は華やかな部分が目につくもの。

しかし、作者の森田まさのりさんは芸人の悩み、苦しみを丁寧に描いています。

一発屋を量産するテレビのお笑い番組とは?

ネタで人に迷惑をかけてしまったら?

そして、この作品の最大のテーマ・・・相方とは何か?

芸人たちは様々な壁にぶつかります。

この物語の主役は上妻と辻本です。

しかし、どちらかと言えば周りの芸人たちがとても良い。

彼等が悩み、苦しみ、その姿を見て2人が学ぶという感じですね。

デジタルきんぎょ、ねずみ花火、るのあーる・・・。

彼らの生き様は胸に迫りますよ。

あと、表紙にある森田まさのりさんのコメントが熱いです。

そして、真面目さが伝わってきます。

森田さんは、時々、テレビでお見かけする事があります。

あの笑顔の裏にはものすごい熱さがあったのですね。

感想(ネタバレ)

やはり、上妻と辻本のべしゃり暮らしよりも、周りの芸人たちの方が印象に残りました。

まずはデジタルきんぎょ。

金本と藤川のコンビです。

モデルは極楽とんぼかな?

テーマはコンビの不仲と相方を失ってしまった時ですね。

漫才コンビの不仲は良くささやかれます。

しかし、当然と言えば当然なんですよね。

四六時中ずっといるのですから。

話すこともなくなるだろうし、馴れ合うこともなくなるでしょう。

顔を見るのも嫌になるかもしれません。

そんな2人を見て、周りが不仲だと言うのでしょうね。

本人たちにそんなつもりはなくても。

でも、根っこの部分は繋がっているのだと思います。

2人の関係性が良い方向に変わり始めた時に、藤川が亡くなってしまいます。

金本は相方を失った喪失感を、ラジオで爆発させます。

この時に、相方って親族みたいな感じなのかなと思いました。

自分と関係が深ければ深いほど、失った時には訳がわからず、頭が麻痺してしまうのです。

後で思い出がよみがえった時に、ぶわぁっと哀しさが襲ってくるんですよね。

金本にとっては、ラジオブースが思い出の詰まっていた場所だったのでしょう。

彼は、辻本の相談相手として、ストーリーを引き締めてくれる良いキャラでした。

次にねずみ花火です。

根津と花田のコンビです。

彼らは、ネタで上妻の実家のそば屋をけなしてしまいました。

これにより、そば屋の売上が落ちてしまい、上妻の母親は過労で亡くなってしまいました。

2人はこの罪悪感にさいなまれているのです。

真面目な根津は、誠心誠意、謝ろうとしました。

花田は、自分は悪党であると思い込ませ、罪悪感から逃れようとします。

お笑いは人を幸せにするものです。

しかし、言葉を生業とする以上、人を傷付けてしまう事もあります。

イジり方を間違えてしまったら、イジメになっちゃいますからね。

そのさじ加減をうまくしないといけないですよね。

花田が許されている事を知り、涙を流すシーンはグッときました。

もう書ききれないくらい、周りの芸人たちのドラマが素晴らしかった。

しかし、1番泣いたのは辻本の両親の話でした。

初めは父親の中西富美男のダメさにイラッとしていたのですが、あのネタ張に涙腺が決壊しました。

やはり『努力できる才能を持っている人こそが本当の天才』なんですね。

そして、母親の辻本仁美の情の深さと強さもすごい。

ラストに辻本がたどり着いた1つの答え。

『相方とは隣で笑ってくれている人』

何があってもずっと笑っていた父親。

蒸発をした夫を笑顔で待っていた母親。

彼の両親は、すでに指針を示していたのですね。

参りました。

この作品には名言がたくさんありました。

わたしが1番印象に残ったのは、げんこつロデオ岩隈将大の言葉です。

彼は、父親の会社での不正で借金を背負う事になりました。

初めは荒れもしましたが、すべての現実を受け入れ、そこから始める決意をします。

無理矢理にでも笑って意味のある人生にすると。

そして、こう言います。

「今までの人生全肯定じゃ!!」

この言葉は響きました。

ネガティブなわたしの脳天を突き刺しました。

こんな強さがほしい・・・。

とにかく笑おう。

笑って毎日を過ごそう。

そして、何かをコツコツとやり続けよう。

そうすると、いつかわたしも天才に・・・。

そんな事を思わせてくれた物語でした。

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